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2021年5月14日
先代の築き上げた会社を引き継ぎ、新たな経営の舵取りを担う後継者たち。
それぞれ生い立ちや経緯は違えど、事業承継を自分たちの理念を実現するための手段と捉え、日夜、知恵を絞り、行動を起こしている。
そんな彼らに〝自らのオリジン(原点)〟とともに、新たな時代を迎える上での覚悟と決意を語ってもらった。
今年1月に先代が亡くなりました。享年78歳でした。医師より余命宣告を受けていたので、ある程度の覚悟はできていましたが、いざ現実を突きつけられると言い知れぬ気持ちがこみ上げるものです。創業経営者としても、父親としても私には偉大であり、大きな存在であったことを改めて実感しております。
せめてもの救いは、60代で社業から身を退き「普通のおじいちゃん」をさせてあげられたこと。本人もお友達とゴルフに行ったり、海外旅行に行ったり…と、晩年を楽しんでおりました。でも、今思うとそれもすべては彼の計算通り、敷かれたレールの上の話だったかもしれません。
私が社長の座を譲り受けたのは、今から12年前、33歳の時でした。その瞬間から仕事上の口論はなくなり、私のやり方に一切、口を出さなくなりました。実際、彼は取締役も外れて代表権も手放します。〝会長〟としていたのは、昔からのスタッフが急に苗字に〝さん付け〟で呼ぶのも何だってことになり、便宜上の役職を設けたに過ぎません。
おそらく彼は私に「いち早い自立」を促したかったのでしょう。仮に私が何か相談を持ちかけ、父親からアドバイスを受けてしまうと、それがどこか精神的な言い訳となり、責任の所在があやふやになってしまう。そうではなく「お前が決めたことは最後までお前が責任を取れ」と、逃げ道を潰したんだと思います。
父と私は、経営者としての〝想い〟は同じでした。彼の口癖は「従業員を路頭に迷わせるには行かない」でしたし、経営理念は今も変わらず『お客様の安全と満足を第一に』です。
ただ、その実現に向けたやり方は彼とは違った。昔は良くも悪くも意思決定が悠長で、どんぶり勘定的なところがありました。そのため父の補佐をし始めた頃から、「古い考え方から脱却しないと時代に取り残されてしまう」という危機感を抱くようになったのです。私が一番危惧したのは、経営と従業員の分断でした。
父親は従業員一人ひとりと向き合い、自らの創業理念やゴールといったものを伝えてきませんでした。それが故に、現場はただ目的もなく時間から時間まで淡々と働いているように見えたのです。これでは、条件の良い職場が他にあれば、すぐに去られてしまうことは想像できました。
こうした危機感が結果として、父への引導と申しますか、2代目としての決意表明となったのですが、私にはことさら従業員の生活を守るだけでなく、心の充足まで含めたやりがいの創出が使命だと考えるようになりました。
とはいえ、これには前例もなければ解答もありません。今なお試行錯誤の連続です。これまで商社の担当者様をはじめ、組合や外部研修で知り合った先輩経営者の方々に助けてもらいながら、自分なりの〝色〟を模索してきたというのが正直なところです。
結果的に、ビジネスの土台としては、ユーザー車検の導入を皮切りに、認証資格、指定工場化、中古車販売、レンタカー、新車リース…と業容を広げて参りました。また、これと合わせてホームページの拡充をはじめ、WEB予約システムやガソリン価格比較サイトとの機能連携、さらにはキャッシュレス決済の導入等、デジタルの融合を図ってきました。
各種システムの導入により、煩雑な業務が緩和されるだけでなく、商圏外からも新規顧客を誘引できるなら、従業員の負担が減ります。そして、業務効率化により獲得した利益についても、彼らに還元することを旨としております。
具体的には、家族も含めた食事会や社員旅行といった娯楽関連をはじめ、スキルアップにつながる各種研修・勉強会の開催や、アルバイトも対象にした有休消化の取得&ボーナス支給…など。働きやすい環境の中で、少しでも張り合いが出れば嬉しいです。
キレイごとで言っているのではありません。私もその昔は、経営者としての責任感が空回りし、利益重視の発想で時に従業員にキツく当たってしまうこともありました。余裕がなかったのだと思います。しかし、自分の中での気づきがあり、途中から〝楽しい職場づくり〟というエッセンスを取り入れた途端、自分自身も経営を楽しめるようになり、精神的に安定し始めたのです。
今では自分の役員報酬など無論のこと、事業規模の拡大も副次的なことだと思うようになりました。それより、従業員の方々が自分の人生の充実ぶりを仕事を通して感じてもらうことが何よりの喜びです。そして、それを友人やご家族の方々にも自慢げに語ってもらえるようになることが、経営者としての務めであり、冥利でもあると感じております。
今後、脱ガソリンの流れは避けられないでしょう。しかし、心が充足した従業員と一緒に、自分たちの理念をブレずに追いかけていけば、例え販売する商材が変わったとしても生き残っていけると確信しております。スタンド商売うんぬんではなく、今の仕事を通して地元のお客様といかに信頼の関係性を築いていくか、そのことの方が何倍も大切なはずです。
今になって思うんです。もし父親があと5年10年と長生きしたとすれば、必ず介護の問題が発生していたと。果たしてその時に会社の存続を全力で守り切れるのかと言えば、気もそぞろになっていたはずです。おそらく父は悟ったのでしょう。俺は一足早く引き下がるから後はよろしく頼むぞ…と。
父は町役場に勤めていた頃から困っている人を見ると助けたい一心で、打算なく動いてきた人でした。市議会議員になってからも、地元の方々のために奔走し、今なお感謝の言葉を述べてくれる人が絶えません。
まさに父らしい引き際でした。私は会社を背負う身としてはまだまだ若輩者ですが、だからこそ、お前は目の前の仕事に集中しろと身体を張ってメッセージを伝えてくれたのだと思います。最後まで本当に偉大な経営者でした。
私にはその遺志を全うする責務があります。彼の死をプラスに転化するためにも、これから全身全霊をかけて、エイワ石油の存続と従業員の生活を守り抜いていく所存です。
P.42 「〝第二の創業〟に挑む後継者たちの覚悟と決意」より
【 掲載ガソリンスタンド 】
carenex 佐屋町CS / エイワ石油(有) (愛知県愛西市)
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