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2023年10月25日

SSとカフェと本屋 ここは心が安らぎ豊かになる 「サード・プレイス」

※ こちらの記事は、株式会社月刊ガソリンスタンド社よりご提供いただいた記事となります。




2020年のSS内カフェに続き、約1年前からは書籍の販売も開始した有田石油。エネルギー源、カーケア拠点としてだけではなく“独自の価値”をつくりだし、地域に必要とされる道をまい進し続けている―。





自宅(第1の場所)や、職場(第2の場所)とも異なるが、そこで過ごすだけで気持ちが安らいだり、心が弾んだり、さらには地域の仲間とコミュニケーションを深めたりと、人生を豊かにしてくれる場所「サード・プレイス」。


SSであり、カフェでもあり、そして本も販売する有田石油・有田SSは、自宅でも職場でもないものの、フッと立ち寄りたくなるまさに「第3の場所」として、地域住民のリフレッシュの場、あるいは新たな価値観を生み出す場として彩りを加えている。


1959年に創業した同社。薮野睦士専務取締役(34歳)も幼い頃から地域にエネルギーを届け、顧客の車を大切に扱う父・潔代表取締役社長の背中を見て育った。


そして高校生の頃にアルバイトをしてみると「SSの仕事はしっくり来て合うな」と思うと同時に「一生懸命に働く父の姿がやたらとカッコよく見えた」そうで、有田石油で働くことを決意。大学卒業後に家業に入った。




学生時代にバックパッカー等で多くの国々を旅した薮野専務。その旅の中で憧れたのは「自分の地域を愛する人たち」の充実した笑顔で、店づくりの方向性もそれを目指した。


「ただ、会社ですので稼ぐことも当然ながら重要で、地域(住民)に喜ばれることを目指す楽しさがある一方で稼ぐ。そのバランスに悩みました」と薮野専務は語る。


そんな折にSSで開催した車のリースイベント。新車販売台数は増えたものの「お客様が求めているものとでズレがあるのでは…」と感じた。


「我々の喜びが8に対して、お客様の喜びは2。そんな印象でした。そこで考えたのは、もっとお客様が喜んでくれることはできないか、ワクワクできることはないか、力になることはできないか、というものでした」


そうした中、たまたま京都の焙煎家・コーヒー焙煎所が和歌山の白浜に出店するというタイミングで知り合いを通じて紹介してもらい、有田石油でイベントを開催。コーヒーとメキシコ料理が味わえるイベントは大盛況となった。


「その時のお客様の笑顔が本当に最高で。そこからはワクワクする場所を提供し、人で、場所で、喜んでもらいたいと思うようになりました」


その後、店内の改装を行い2020年12月、建屋1階に誰もが気軽にくつろげるカフェをオープンした。





似ている本屋とSSの環境


書籍を取り扱うきっかけは22年1月。コーヒーで知り合った関係者か京都の書店「誠光社」を紹介してもらい、SSで書籍の出張販売イベントを1週間、開催したことが始まりであった。


「元々、読書は好きだったのですが、そのイベントの際に学生時代に本屋で味わった感覚を思い出したんです。言葉にすると、たくさんのタイトルを浴びるだけで自分の中の世界が広がるという感覚でしょうか。


そうした感覚に加え、人の心の豊かさや力にもなり、街を変えることもできそうな本のパワーを改めて実感。


また、大手に集約されている現状等がSS業界に似ていたり、一方で街における本屋の役割について話を聞くうちに、常設で本を置きたいという気持ちが大きくなりました」


書籍の仕入れに関しては薮野専務のセレクトによるもので、内容に加え、直観も生かしながら偏りの無いように幅広くラインナップする。


「今は自然や、多様な価値観、働き方等のテーマを中心に店内に200冊ほど揃え、本好きの方からすると、いずれもあまり本屋さんでは見かけない本が並んでいる、と感じるのではないでしょうか。本を目的に来店してくださるお客様も増えており、新しい世界を知ってもらうということでは少しは役に立てているのかなとも思います」と薮野専務は微笑む。



「信頼してもらう、信用してもらう場所」を作る!


カフェに本屋、さらには餅つきや風鈴づくりなどの交流イベントも開催している同社。その動機はいずれも、お客様がワクワクして喜んでくれること、力になること。




薮野専務は「以前の車関連イベント(先述)では、我々の喜び8に対し、お客様の喜び2という印象でしたが、今は嬉しいことに手応えとして、我々1、お客様9という感じにまでなってきました。そうした機会を通して、何度も繰り返し築いたコミュニケーションが信頼、信用につながれば」と強調する。


「○○いいですよ! △△おすすめです!のように、売る姿勢が強過ぎるとお客様とスタッフ双方がストレスを抱えてしまいます。ですので、我々が目指しているのは、車を洗いたい時、あるいはタイヤやオイルの交換時期、車検といった場面で、ふっと脳裏に浮かび、“せっかくならあそこで”と選択肢の一つとしてわれるSSになること。


そうした関係性となれるよう、気軽に寄れてくつろげる店づくり、イベントに関しても気軽に足を運べて、思い出に残るようなものにしたいと心掛けています」


このような思いを込めたイベント、そして日頃の接客・サービスにより顧客との関係を密に築いてきた同社。その積み重ねは車検の増加にはじまり、各種カーケアの収益増加にもつながっている。




「稼ぎつつ心も豊かに。数字に見えないものも大事にしたい」と前を見据える薮野専務。今後も有田石油ならではの価値を作り、地域にとってかけがえのない店として、その存在感をなお一層高めていく。





月刊ガソリン・スタンド 2023年 6月号

P.101 「◎6月号販売戦略」より


【 掲載ガソリンスタンド 】

有田SS / 有田石油(株)

(和歌山県有田郡湯浅町)


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