昔から人付き合いは得意ではなかった。

失敗すると自分を責める癖があり、それがまた人との距離を遠ざけた。

でもマイナス面だけじゃない。

その分、好奇心や探求心が旺盛で一度気になると徹底的に知りたくなる。

動物が好きで動物海洋の専門学校に入学。

卒後はペット店で働くも、生活苦に…。

携帯ショップを経て、この会社に入った。

どの仕事も未経験だったが、だから余計に知りたいと思えた。

SS仕事が面白いのは、売るまでのマニュアルがないこと。

この会社にはノルマがなく、自分の成長のために仕事ができる。

新しい知識を得られるのが新人の特権。いっぱい吸収してお客様まで届けたい。

私は大卒の第1期生として入社した。もう45年も前のこと。

ちょうど今の社長が生まれた年だ。

思い出は数知れない。

20代は古参の部下に現場でいびられ、30代は労組で組合長も歴任。

会計知識を買われて経理職に就くと、40代で銀行交渉を任されるようになった。

いろいろ経験して分かったことがある。

人間の能力なんてみんな一緒。差があるなら「考え方の違い」だけだ。

誰だって痛みの伴う変革は怖い。でも人は逃げるとき、必死に走るでしょ？

ならその勢いで壁を突き抜けたらいい。この会社が挑むのは常に前例なき課題。

だから変化を楽しんだもん勝ちだよ。人生を懸けてきた俺が保証する。

同級生より稼ぎたい一心でスタンド業界に入った。

だが、上司と反りが合わず退職。今の会社に拾ってもらった。

そこで人生の師匠と出会う。

よく怒鳴られ 叱咤されたが、人間的な魅力を感じた。

「時間を切り売りして小銭を稼ぐより、お客様との時間にもっと神経を注げ」

そんな教えが今でも心の支えだ。

人を使う立場になって気づいたことがある。

自分が持っていない能力ほど相手の良い面だったりする、と。

最近、かつての部下が社内MVPを取り、同じエリアで辣腕を振るっている。

最強のライバルの出現に気持ちが昂る。

また次の手強いライバルを育てたい。私は一生現場主義。

幼稚園の頃から野球一筋で、高校もスポーツ推薦で入った。

決して裕福な家庭ではなかったが、道具も遠征費も黙って払い続けてくれた。

将来は手に職をつけて欲しいと、

医療系の専門学校を勧められたが、勉強についていけず中退。

親の心配をよそに車関連業界へ入った。

人見知りで受け身の私には、機械いじりの方が性に合う。

電装などの込み入った作業が得意で、

「そんなこともできるの？」と驚かれるのが、毎日のささやかな誇り。

工具類は自腹で揃えるのが私の流儀。野球の用具と一緒で特別な愛着が湧く。

寄り道もしたけど色々な人に助けられ、自分なりの場所を見つけることができた。

言葉にするのは照れくさいけどこの笑顔がせめてもの感謝の証。

昔はこの仕事に誇りを持てなかった。

同級生に見られるのが恥ずかしくて、バイトの勤務先を変更。

そのくせ仕事ができない人を平気で見下していた。

ある時、来店客にからまれ、学歴をなじられた。

その瞬間、渋谷社長が割って入りお客に問い詰めた。

「あなたはこいつの何が分かるんですか⁉」

それまで社長には態度を注意されてばかり。

本気で嫌われていると思っていた。

でもそんな私のわずかな尊厳を体を張って守ってくれた。

人より反抗心が強かったのは、劣等感の裏返しだったと思う。

チームの頼もしさを知ったのもそれから。

今度は私が後輩に体を張って伝えたい。

自分の居場所に誇りが持てる幸せを。

自動車整備に携わって40年。最近は熟練の腕の見せ所も減った。

だが、どれだけ電子化されようと、所有者である人の心は変わらない。

今も昔も魂を注ぐだけだ。

子供の頃からミニカーを分解して遊んだ。

10代は通信教育で整備を学び、憧れの民間整備工場に就職。

外車が入庫すると、辞書を片手に英文の仕様書を読み解いた。

しかし転職先で体を壊して退職。もう工具は握れないと思った。

療養後、掛け持ちで湘南菱油へ。

これほど社員思いの職場は珍しい。正職の主任者を頼まれた時は嬉しかった。

もちろん、修理しても不完全な時はある。

でもそれまでにどれだけの最善を尽くすか。

整備は生き方そのもの。

最後まで妥協したくないからこそ、この会社でキャリアの花道を飾りたい。

この春 アスリート採用で入社した。

中学時代は全国で4位に入賞。インターハイもインカレも出場した。

でも世間の注目が低いフィールド種目では、実業団入りは難しい。

多くの先輩がそうであったように、競技を断念せざるを得ないのが現実だった。

しかしこの会社は私の挑戦を受け止め、全力で寄り添ってくれる。

まるで一緒に跳躍するかのように…

自己ベスト記録から8年。その先の1cmにすべてを捧げてきた。

初めてSSで働いてみて、チームワークの頼もしさを知った。

恩返しのためにも 早く記録を更新したい。

でもそれは夢へのスタートライン。旭油業と世界へ羽ばたくのはこれから。

人生は思い通りにいかないもの。

コントロールできるのは唯一、自分の内面に潜む感情だけ。

だから日々の心のあり方が、幸せの形をつくるのだと思う。

33年のSS人生は波瀾万丈だった。

二度の廃業の憂き目に遭遇。

長期療養とリハビリを要する、重大な労災事故も経験した。

運が悪いと言えばそうかもしれない。

でも自分の無力さを知れたことで、肩の力が抜けた。

今こうして私がいられるのは、

挫折しても、心が折れても、手を差し伸べてくれた人達がいたから。

感謝できる喜びを胸に、

久しぶりの店長職を笑顔で全うしたい。

たまたま参加した合同企業説明会で

一際 人だかりのあるブースがあった。渋谷石油だった。

『新規事業の挑戦者求む』の垂れ幕。経営トップ自ら熱弁する会社は珍しかった。

しかも自社の売り込みをせずひたすら「悔いなく就活しろ」と激励する。

こんな社長の下で働きたいと思った。

正直、親には反対された。

国立大で化学生命系を専攻した私は大学院での細胞研究を期待された。

だが私のレベルでは埋もれるだけ…

いっそ異分野に挑戦したくなった。飲食業に教科書はない。

でも自分ならではのアイデアと工夫で、価値を生み出せる喜びがある。

研究職では知り得なかっただろう。

いつか会社の屋台骨を背負えるその日まで

カリスマ社長への僕の挑戦と感謝の恩返しは止まらない。

僕はこの仕事しか知らない。

でもこの会社はいつも、自分の限界や未熟さを教えてくれる。

整備の専門卒でバイト歴も長い僕は、最年少で店長に昇進した。

だが期待に応えようと気負うあまり、膨大な作業量を抱えて、自滅

あろうことか会社の不満をぶちまけ、退職届を提出し受理された。

でも、なぜか直前に異動辞令が発令。接客に集中できる店へ異動となる。

どんな思惑があったかは知らない。

ただ、仲間と走り回っているうちにもう一度 頑張りたいと思った。

本当は人を信用できずにいたと思う。でもこの会社は最後まで僕を信用してくれた。

まだ社長の期待には応えられないけど、今はチームで協力する喜びに浸っていたい。